見習うものが多すぎる、よっしーです。
さて、財産の残し方として、私の実家も私自身も
財産と胸を張れるものなど無く、無縁のものと思っている。
私が売買の不動産営業をするようになって、2件目の成約のお客さんの話。
当時勤めていた会社所有の建売物件があった。
場所は公団住宅や邸宅が建ち並ぶ良好な区画整理地に近かった。
しかし、駅までのアクセスはバス便になる地域。
営業経験の少ない私もオープンハウスを実施しながら、
きっと近所の人が買いに来るのかな程度に思っていた。
数回開催するも来場者は少なく、売れる気配も薄れていた。
他のひとは知らないが、私自身はオープンハウスが大嫌いである。
理由として『ヒマだから』
当時はまだ生意気度合いも低く、どんな天気でも外で待機していたが、
後に『オープンハウスは寝るものだ』というとんでもない解釈をするようになる。
そのためか折角、広告を入れて待機するわけだから、
やる気のあるひとを現場待機させるようになったのは言うまでもない。
当時は簡単にいうと、訳がわかっていなかったため、
とにかく外にいて誰でも声を掛けていた。
その時、隣の奥さんとよく話をすることがあり、
世間話で一日を費やすほどの日もあるくらいであった。
ある週末、今週も売れなかったと渋々会社に戻ると一本の電話が鳴る。
電話の主は先の『となりの奥さん』である。
『あ〜良かった、本人出てくれて。あたし名刺もらってないから
あんたの名前知らないんだよね〜ガッハハハ』
体格も気持ちも元気一杯の奥さんである。
『あたしの友達で、家探しているひといるんだけど、明日でも見せてよ』
お〜!!良い話じゃないですか!
電話を切り、早速伺った電話に連絡後、翌日の案内のアポを取ります。
案内〜打ち合わせ〜契約前の調整と話が進み、契約だぁ!!
と浮かれていたときに買主から一本の電話です。
『あの〜主人の具合が悪く、出来れば早めに契約したいんですが』とのこと。
週末に予定していた契約を数日前倒しして、平日の夜に契約することになった。
買主さんは、車は所有していたが息子さんが通勤にしようしており、
平日の夜の契約の場合、息子さんが家に帰ってからでは遅くなるという
理由から私が自宅まで迎えに行くこととなった。
それまで全て奥さんとの打合せであり、
迎えに行ったとき初めてご主人と会うこととなった。
事前に体調が良くないと聞いてはいた。
初めて会ったとき、少し驚いた自分がいたことを記憶している。
会社に向かう車中、世間話をしているとご主人はひどく咳き込む様子もあった。
聞くと、今朝まで入院していたようである。
その日は契約のため、一時外出をしたそうだ。
無事契約も済み、後日ローンの申込みのため、自宅に訪問した。
もちろんご主人はいない、契約後また病院に戻り、療養中とのこと。
借入額の打ち合わせの際、全体の資金合計に対しどれくらいの現金を用意し、
借り入れをするのかを話した。
売買価格3,000万円半ばに諸費用、自己資金は3,000万円あるという。
足りない分を息子さん名義で借り入れすることになった。
ローン審査から残金決済、引渡しまでの間、ご主人の入院先にお見舞いに数回伺った。
明らかに初めてあったときからすると、変化があった。しかし、前向きな変化ではない。
会う度に『早く引き渡しを受けたい』というご主人に、
『まぁ銀行のやっていることですから、もう少し待って下さい』と
なだめるのが恒例となっていた。
また『保険辞めれば、借り入れしなくてもいいんだけど』と
息子さんが借金をすることに非常に心配する様子であった。
決済の日、ご主人に『無理してでも銀行に行く』と押し切られ、
私とご夫婦の三人で銀行に向かった。
当日、息子さんはどうしても仕事が休めず、事前に書類だけ交わし、残金決済を行った。
その日、決して具合が良い訳ではなかったにも関わらず、
振込作業を終え玄関鍵や保証書を渡しているときのご主人の顔、非常に明るかった。
お見舞いに言って小一時間、冗談話をしてるときにも見せない満面の笑顔であった。
その数ヵ月後、ご主人は他界した。
あとで奥さんに聞いたところ、住宅資金に充てた3,000万円の現金は
早期退職による退職金だそうだ。病気が原因で会社を辞め、
治療に専念するつもりだったようだ。しかし病気の進行が思いのほか早かった。
それまでの預貯金は治療費に充てしまったため、全額現金で買うことは出来なかった。
しかし、その後、生命保険金で当初借りたローンは返済することになった。
残った家族へ、父として夫として最後の役目を果たした。
一戸建てに引っ越す前は、分譲ではあったが古い公団の集合住宅、
いつかは一戸建てという夢があったに違いない。
長生きはしたいと思う私が同じことができるかというと、とても不安である。
その場面になったら、きっと慌てて家のことなど考えていないと思う。
約7年前のことである。今でも鮮明に当時のことは覚えている。
直接的ではないが、仕事に取り組む際、良い意味で
自分の中で大きな影響も受けていると思う。
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